◆性表現に関する法的規制

 性的な表現を行う場合に留意すべき事項は大まかに三点。

1.わいせつ概念
2.児ポ
3.青少年保護

 筆者は生粋の字書きなので、本稿では小説のみを対象とし、絵や漫画など視覚的な創作物については一切検討しない。

 で、2020年1月時点では、活字の場合で特に問題となるのは1だろうか。

◇わいせつ概念

 わいせつ概念に関しては、かなりふわふわした感じで前にも書いたが、新しいデータを入手したのでアップデートしておく。

 わいせつの要件は、
1.徒に性欲を刺激・興奮させること
2.普通人の正常な性的羞恥心を害すること
3.善良な性的道義観念に反すること

 これらを満たすものであって、さらにわいせつ文書の条件は、
1.当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法
2.右描写叙述の文書全体に占める比重
3.文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性
4.文書の構成や展開
5.芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、
6.これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否か

 小説作品で最後に摘発されたのは富島健夫の官能小説『初夜の海』(1978)。21世紀に入ってからは、小説での摘発はない(はず)。

 法改正がなされていないので、現在でも摘発される可能性はゼロではない。だが、小説などの文書は、それ自体わいせつ物ではなく、その言語がいかなるものであれ、わいせつ規制の対象にはならないと解すべきであるとの指摘もある。

(加藤隆之『性表現規制の限界 「わいせつ」概念とその規制根拠』2007.ミネルヴァ書房 など)


◇児童ポルノ

 児童ポルノとは実在の児童の性的な行為等を視覚的に描写したものを指す。したがって実在しない少年を扱うフィクション作品であって、表現が視覚的ではない小説は規制の対象外、とみるのが妥当。

 ただ海外では創作でも児ポとみなされる場合がある。特にカナダは厳しく、小説で摘発されたケースがある。わが国でも創作物を児ポの規制対象に含めるか否かについては賛否両論あるようで、この先どう転ぶかはわからない。そのため大手投稿サイトなどでは、児童ポルノ的な描写を含む小説作品の投稿を禁じている場合がある。


◇青少年保護育成条例

 問題となる可能性があるとしたら青少年保護育成条例における「有害図書」の項目だろうか。

 有害図書とは、性や暴力に関して露骨な表現を行っており、青少年の健全な発達に有害である可能性があるとして、都道府県知事等の指定する図書である。

 (わいせつ物ではない)有害図書を成人と確認できた者に対して販売・頒布などする場合は問題ないが、青少年に対して販売・頒布等を行った場合は罰則がある。インターネット上であっても、有害情報を青少年に閲覧等させない努力義務を課している自治体もある。

参考:文科省/「都道府県の青少年保護育成条例における有害図書類等の指定等に関する規定について」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/07020115/021.htm)

 条例なので細部は地域によってまちまちだが、この有害図書には包括指定・団体指定というものが存在し、特に知事が指定しなくても条件を満たすものは未成年が閲覧するのにふさわしくない「有害図書」(「不健全図書」)として自動的に指定される。

 ……が、2020年現在、小説でこの有害図書に指定された前例は(おそらく)なく、これも視覚的な情報を表示した絵図等が主な規制の対象となっているようである。

 過去に大阪は堺の図書館でボーイズラブがエロすぎるとかなんとかでゴタゴタした時があった。だがその時は「BL小説の線引きが難しい」という理由で、BL小説は「有害図書」認定を免れたそうだ。現在もコミック等はガンガン規制されているが、現状小説での指定はない……はず。

 また東京都の「不健全図書」の指定は実質的に全国的な販売規制の基準となっているが、その東京は「小説は規制の対象外」と判断している。

(参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/東京都青少年の健全な育成に関する条例) 2022.1.22参照

 まあ全自治体のを確認したわけではないので断言はできないが、そもそも昨今において官能を主目的とする「ポルノ小説」が堂々と頒布され、かつまたそれらの小説が「わいせつ物」として摘発されずにいる実情からしても、小説でアウト判定される可能性はかなり薄いのではなかろうか。とはいえ前例がないからといって今後もないという保証はないので、自主規制をしておくに越したことはない。



 結論、活字の規制はかなりゆるやかなようである。

 小説に年齢制限とか別になくてもいいんじゃないかなあと個人的には考えているのだが、まあ、投稿サイト等々の先達に従って、青少年のメンタルや、見たくない人の見ない権利を保護するために、当サイトでも慣例的に自主規制を行っている次第である。

 こうした規制は善良な社会風俗を維持するためのものだが、行き過ぎると憲法によって保護された表現の自由を損なう。自由があるからといって何でもかんでも書いていいというわけではないのは重々理解しているが、規制規制で純情や愛情を殺すのは本末転倒であるし、障害のない恋に魅力はない。何より現実を超越した先にある理想を表現することが創作の醍醐味である。やむを得ず不健全な表現を行うとしても、それは愛の踏み台として行うのであって、公序良俗を乱す意図は一切ないのだということをご理解いただきたい。