※本作品にはR-18程度の性的表現が含まれます。18歳未満の方は閲覧をお控えください。


 のどかな農村の片隅に建つ、小ぢんまりとした教会に天使が降臨したとき、村人たちは大いに驚いたものだった。

 その教会には、高名な芸術家の作品があるわけでもない。もちろん絢爛豪華でもないし、聖人にまつわる何かしらがあるわけでもない。白鳥のような翼を背に生やした、本物の天使さまが降臨なされるような古くからの伝説もありはしない。特別、敬虔な信者がいるわけでも、徳の高い聖職者が仕えているわけでもない。祭礼のない時には神父を含む若者連中が、口うるさい女たちの目を盗んで酒盛りに使っているような、冴えない丸木小屋だった。

 その時も、日の高いうちから酒盛りをしていた。
 ほろ酔い機嫌の神父が、花のような甘美な香りに誘われて辺りを見回すと、その金髪碧眼の美しい少年が、いつの間にか酔いどれたちの輪の中にいて、酒に満ちた木の盃を、不思議そうな顔で見つめていたのだった。

 はじめは、よくできた幻だなと神父は思った。それが盃を傾けるところも、ぽーっと頬を赤くしてしゃっくりをするところも、想像にしてはよくできていると、自分を褒めたくらいだった。その少年が、こてっと自分の方に寄りかかってきて、確かな重みを肩に感じると、この調子で酒場のマリーも創造して上にまたがらせようと考えたくらいだった。神父が酒池肉林の創造に取り組んでいると、冗談まじりに誰かが言った。

「日頃の行いが、いいせいかね。天使が見えらぁ」
「奇遇だなあ。俺も見えんだよ。お迎え近ぇのかなあ」
「……ちょっと待ってくれ。夢じゃないのか?」

 神父は天使の肩を抱いた。なめらかな手ざわりの白布の下には、確かな肉の感触。次いで折りたたまれた白い翼に触れた。しっかりとした骨格は飾り物では決してなく、神父の手に従ってするりと抜けた羽からは、薔薇のような香りがほのかにした。神父はその指で、隣の酔っぱらいの頬を思い切りつねった。

「夢じゃないのか!?」
「いててててて! いてえよ! 夢じゃねえよバカヤロウ!」

 ――――それからは、上を下への大騒ぎだった。

「あのう、天使さま。天使さまは、どうしてこの村にご降臨なされたのですか?」

 酒の打撃から立ち直った天使に、長老がおそるおそる尋ねた。天使は瞬きを三つはさんで、微笑みとともに答えた。

「みなさまのお役に立つために参りました。……時に、聖職者の方は、どちらに?」

 神父が居住まいを正して「私です」と名乗り出た。すると天使は彼のもとへしずしずと歩み寄った。

「聖務のお手伝いをさせてください」

 屈託なく微笑む天使に簡単なお掃除を言いつけたあと、神父が埃かぶった教典を物置から引っ張り出して、必死に読み返したことは言うまでもない。

 天使が訪れて以来、村人たちは信心深くなった。神父のおぼつかない祈祷の進行も、次第に堂に入ってくるようになった。天使は村人たちの調子はずれの賛美歌に聞き入り、時にはうっとりするほど美しい声で、神をたたえる歌をうたった。
 教会の一番うしろの長椅子が天使のお気に入りとわかると、村人たちはいつでもその席を空けておくようになった。
 予約席に天使が落ち着くと、子供たちがじゃれつきに行った。ゆるやかに波打つ金の髪や、きれいな白い翼を、子供たちはこぞって触りたがった。天使はにこにこ微笑んで彼らの相手をしてやり、口づけや抱擁を惜しみなく与えた。

 人々は足しげく教会へ通った。仕事を始める前に、ちょっと休憩がてらに、そして一日よく働いたあとで教会へ顔を出し、美しい彼の笑顔を見、心のこもったねぎらいの言葉を聞いては、くたびれた心を慰めた。

 清らかで神々しく、近くへ寄ればほのかに花の香りの漂う、麗しい美少年。地上の人々を救済するために天国から舞い降りた神の御使い。善良で純情無垢な、美徳の体現者。天使は人々のよき友、よき隣人である。

 聖方教会の教典にはそのように記されている。

 しかし神父は知っていた。天使に対して行われる、教会の密儀を。
 司教らのそばにお行儀よく控えていた白翼の美少年たちが、夜には彼らの肉欲のはけ口として使われていたことを、神父はうんざりするほど知っていた。

 純情無垢な少年たちは疑うことを知らず、悪辣な権力者たちに言われるがまま肉体を開き、穢れをその身に受けてきた。時に数人がかりで手ひどく扱われることもあった。しかし少年たちは嘆くどころか、人々の役に立つことを喜びとさえ思っていた。――そう、教え込まれていた。

 天使は発見次第捕らえて、教会本部へ寄進するよう通達されている。

 だが、自分のあとをちょこちょこついて回っては、無邪気に小首をかしげる愛らしい少年を、腐敗した教会に差し出す気には、神父はなれなかった。

 むしろ、この清らかな美少年を守ることが、神父の生きがいになっていた。
 神父秘蔵の大人の玩具を天使が目にしてしまった時には、神父は上手い言い逃れをするために知恵という知恵を働かせたし、ませた子供たちが天使にいかがわしいことを吹き込もうとしようものなら、厳しい鉄拳制裁を加えた。

 清楚な美貌の前で語るにふさわしくないことは、徹底的に隠された。ことによると天使は、村の名士の子供よりもずっと丁重に扱われたほどだった。

 彼に頭をなでられていた少女がやがて所帯を持ち、子を産んで、目元のしわや肌のくすみに悩むころになっても、天使は夜の営みのよの字すら知らずにいた。

「天使さまは、いつまでも若々しくていらっしゃいますね」
「はい。長く人々の助けになれるよう、主がわたしをそうおつくりになりましたから」

 ほんのわずかに練り込まれた皮肉にすら気づかずに、無垢なる天使は微笑んだ。村に降り立った時と全く変わらない、若く美しいままの姿で、うっとりするほど愛らしく。



 天使は村人たちのためによく働き、よく祈った。
 一つ屋根の下でともに暮らす神父のためには、とりわけかいがいしく働いた。鶏の鳴く前に起きだしてパンをこね、朝の祈りのために彼を起こし、時にキャベツを見守り、彼の大事にしている鳩に餌をやり、日中は教会でまじめに職務をまっとうする彼を手伝い、時にキャベツを見守り、夜には大きなベッドに身を寄せ合って、週に三回は手をつないで眠る。なんということのない平凡な毎日。そうした穏やかな日々は、この先もずっと続くのだと、天使は信じていた。

 ある夜に、村の若者が血相を変えて、教会に飛び込んでくるまでは。

 その日も村人たちは、天使と和やかなひと時を楽しんでいた。男が丸木小屋の扉を半ば蹴破るようにして入ってくると、腰の曲がった長老がしなびた口をもごもご動かしながら、礼儀知らずの若者をたしなめた。

「なんじゃあ。騒々しいのう。天使さまがびっくりなさるじゃろうが」
「すいませ……でも、た……大変なんです……。外……」

 若者は肩で息をしながらも、教会の外を指さした。切らした息を整えるひまも惜しいといった様子だ。ただごとではないと悟った村人たちが丸木小屋の教会を出ると、すでに放牧地の一角が赤く染まっていた。

 それはまさしく、火の海だった。炎は煙を吹き上げながら野山を包み込み、人々が呆然として立ち尽くしている間にも、その勢いを増していた。

「ねえ、天使さま。天罰が下ったのかねえ。あたしたちがいつまでも天使さまを手放そうとしないから、神さまがお怒りになったのかねえ」
「いいえ、決して。主はそのようなことで、お怒りになど……」

 すがりつく宿屋のおかみを天使がなだめているところに、村人が一人合流した。神父の悪友で、かつて理不尽に頬をつねられた男。彼は村の高台にある物見台から駆け下りてきたところだ。男は神父に耳打ちした。

「騎士ご一行様のおでましだ。……天使サマを差し出せとよ」

 神父は舌打ちした。来るべき時が来てしまったのだ。天使のためなら悪い意味でなんでもする連中が、とうとうこの村まで来てしまったのだ。

「断ったら、今度は村が燃えるとさ。……どーする?」
「……決まってる」

 教会からランプを一つ持ち出して火をつけると、神父は「おいで」と天使の手を引いた。

 迫る火の手から遠ざかるようにして、神父は村はずれまで天使を引っ張っていった。森の中を分け入って、洞窟に入る。その奥へ奥へと天使を導き、神父はやがて足を止めた。

「ここまで来れば、大丈夫だろう。誰か……知ってる人が迎えに来るまで、ここで待っているんだよ。いいね」
「神父さまは?」
「……火を消し止めないと」
「では、わたしも手伝いま……」
「だめだ!」

 かつてないほど厳しい神父の声が洞窟にこだました。天使の目に涙がにじんでいるのに気づくと、神父はつとめて優しい声で言った。

「君はここで、皆の無事を祈っておいて」

 天使の髪をひとなでして、神父は離れていった。彼の手にしたランプの灯火が次第に遠のいてゆき、やがて一面の闇があたりを包み込んだ。



 棺桶のような闇の中で、天使は言われた通りに待っていた。
 自分の翼にくるまるようにして、長い間、じっと待った。夜は明けたような気はするけれど、辺りは真っ暗で、今が昼なのか夜なのかもわからない。だんだん、お腹もすいてきた。コウモリの羽ばたくような音は聞こえるけれど、そんなものはとても口にしたくない。
 横になってみると、足にひやりとしたものが触れた。おそるおそる口にしてみると、それは冷たい湧き水だった。飢渇を癒して、天使は目を閉じた。そのうち眠りが彼を包み込んだ。誰かに肩を優しく揺すられるまで、天使は夢の中にいた。

「ん…………。神父さま……?」

 寝ぼけ眼をこすりながら、天使は身を起こした。
 天使を揺すり起こしたのは、黒いガウンに身を包んだ少年だった。松明の明かりの中にも、目鼻立ちの整っているのがわかる。小さな村だ。住人の顔はみな覚えている。覚えのないのは、村の外から来た者だ。

「遅くなってすみません。お迎えにあがりました」

 彼は微笑んで、天使に手を差し伸べた。しかし神父からは、知っている人が来るまで待機するよう言われている。ためらう天使に、少年は微笑みかけた。

「大丈夫ですよ。天使さま。ぼくたちは聖サマエル教団のものです。天使さまを保護するのが我々の使命。ご安心ください。すでに多くの天使さまを本部にお招きし、手厚くおもてなしさせていただいております」

 事実、彼の傍らには、有翼の少年が、松明を手に立っていた。軽く会釈した仲間の姿に安堵し、天使は少年の手をとった。

「あの……火は、どうなりましたか……? 村のみなさまは?」

 少年は答えずに、天使の手を引いて歩いた。高台へ上がると、天使はぎょっとした。かつて農村であったところは、焼け跡と化していた。丸木小屋の教会も、酒場も、工房も、水車小屋も焼け落ち、文明の存在した名残に、瓦礫が残っているばかりだった。

「なにが……あったのですか?」
「…………………………」

 彼は何も言わずに、川のほとりまで歩いていった。
 木のそばに繋いでおいた馬の縄をほどき、あぶみに足をかける。よっと勢いをつけて馬の背にまたがると、彼は天使に手を差し伸べた。

「乗ってください」

 天使はためらった。村の方がどうしても気がかりだった。何より気がかりなのは神父の安否だ。天使は首を振り、踵を返した。
 天使は翼を広げて羽ばたいた。だが、すぐに力つき、地へ落ちてしまった。暗闇と飢餓は思いのほか彼の体力を奪ったようだった。諦めてよろよろと歩く天使の背中を、蹄の音が追いかける。

「どこに行くつもりですか」
「神父さまを……探さなくては」
「闇雲にうろつくのは危険です。ぼくらが来る前に、先んじてこの村へ隊を派遣したんですが、連絡が途絶えてしまったんです。ともかくいったん、安全なところまでお連れしますので。……乗ってください」

 再び、今度は先ほどよりも厳しい口調で促され、天使は仕方なく手を伸ばした。彼を馬の背に引っ張り上げると、少年は馬の横腹を軽く蹴った。

 馬は軽やかに歩き出した。少年はさらに馬を急かしたが、数歩ほどで速度は落ちてしまった。鎧を被せ、重騎士を乗せても力強く疾駆する利口な駿馬だ。小柄な少年二人を乗せた程度でへばるほど軟弱でもなければ、くたびれてもいない。となると問題は騎手にあるのだ。少年は振り返った。白い翼が帆のように大きく広がって、右に左に危なっかしく傾くたびに慌ただしく羽ばたいていた。

「すみません。その翼、たたんでもらえませんか」
「は、はい……」
「あと、ぼくにちゃんとつかまって。肩でも腰でもいいですから」

 天使は翼をちぢこめて、少年のガウンの脇腹のあたりをそっとつまんだ。だがバランスを崩すと、とっさに羽を広げて、羽ばたいてしまう。それで馬の方も驚いてしまうので、歩みは遅々として進まなかった。

「ああ、もう! やっぱり馬車にしておけばよかった!」
「……………………」

 馬上で吠える少年をよそに、天使はちらっと村の方を振り返った。まだ、それほど離れてはいない。名残おしげに神父さま、と呟くと、少年が振り返った。

「大丈夫ですよ。あんなの、殺したって死にませんから」
「そんなこと…………」

 ふと、天使のおなかが切ない鳴き声を上げた。

「ああ……どうも。気がつきませんで」

 少年は腰の袋をあさって、リンゴを一つ差し出した。艶やかで瑞々しく、見ているだけでよだれの出てくるような上玉。飢餓にあってこれを突っぱねろというのは、あまりにも酷である。

 天使は食欲に抵抗しようと努力したが、一口で陥落した。少年に忍び笑いをされたが、甘く熟したそれをかじる勢いは止めようにも止められなかった。

「しかしまあ……いつからあそこにいたんです?」
「ええと……たしか、十日のお昼ごろからです」
「へえ……すると、明かりも食べ物も飲み物もなしに、あんなジメジメしたところで丸三日も待ってたんですか? 難儀でしたねえ。置き去りにするにしたって、もっとマシなところがあったでしょうに」
「三日!?」
「はい」
「あれから、三日も……」

 天使の顔からさっと血の気が引いた。動転してせわしく動く唇からは、時折かすかに「神父さま」と聞こえる。少年はため息をついた。

「だから、ジェロームのことなんかねえ、心配するだけ損……」
「神父さまのこと、ご存じなのですか!?」

 神父の名を耳にしたとたん、天使は活力を取り戻した。彼は少年に詰め寄った。

「もし何かご存じなのでしたら、教えてくださいませんか? 神父さまは、ご無事なのですか? 今、どちらにいらっしゃるのですか?」
「知りませんよ、あんなやつのことなんか。ぼくらはただ、同じところをグルグルグルグル回ってる、アホな奴が飼ってそうなアホな鳩の足についた手紙を読んで来ただけです。洞窟の中にいるあなたを預かるようにってね。それ以上のことは、おあいにくですが知りません。……まあでも『預かれ』ってことは『そのうち返せ』ってことでしょうし、それらしき死体も見かけませんでしたから、何か、上手いことやったんじゃないですか……」
「村で、何があったのですか?」
「ぼくだって知りませんよ。…………知りたくもない」

 少年は眉根を寄せ、話をそこで打ち切るかのように目を閉じた。

 長々と馬に揺られているうちに、だんだん天使も乗馬のコツをつかんできた。ちょっとは周りへ目を向ける余裕もできた。だが景色はどこまで行っても森、森、森。大して代わり映えもしない。遠く離れた木々の合間に鹿が跳ねているのを一度見たくらいだ。
 ふと前を見ると、黒いガウンの背中。刺繍された目のない赤蛇は、教団のシンボルだろうか。よくよく見ると、彼の背中は少し出っ張っているようだ。不思議に思った天使は、蛇の目のあたりをそっと撫でてみた。

「あんまり、背中、触らないでもらえますか。……古傷が、痛むので」
「あ、ごめんなさい」

 天使はぱっと手を離した。

「ひどいのですか?」
「ええ、まあ、そうですね。その当時は、地獄に落ちたかと思うほどでした」
「……そうですか」

 天使は、ぎゅっと手をにぎった。
 彼の背中に触れた感じでは、まるで何か太いものが刺さっているかのようだった。
 きっと、痛かったに違いない。天使はそっと、彼を抱きしめた。背中には、触れないようにして。

「あなたの苦しみが和らぎますように」
「ありがとう。でも、ぼくのはもう治らないので、そういうのはいいですよ」
「そんなことはありません。痛いのは、こうしていると和らぐんです。神父さまが、よく、わたしにしてくれました」
「へえ。あいつがそういうことやるの女にだけだと思ってましたけど、天使にもやるようになったんですねえ」
「はい。いつも優しくしてくれました……」

 話しているうちに、神父との日々を思い出してしまった。あたたかい日々。平穏な日々。神父の顔や、声や、手のぬくもり。そういうものを思い出しているうち、天使の目頭は熱くなった。
 背中の方で聞こえる押し殺した嗚咽に、少年は気づかないふりをした。



 日がとっぷりと暮れたころ、一行は小さな町に着いた。
 宿屋の一室に天使と入ると、少年は天使の服に手をかけた。

「狭い部屋で申し訳ありません。本部に着いたら、もっと広い部屋を用意しますので」
「私はこれくらい広ければ十分です、けど……。あの、何を、なさっておいでなのですか?」
「寝るのに服着て寝るんですか? 大体ね、こんな泥だらけの服いつまでも着てるんじゃありませんよ。さ、脱いだ脱いだ……」

 天使を丸裸にひん剥いてしまうと、少年はまじまじとその体を眺めた。白くなめらかな肌だ。隅から隅までじっくり眺めても、あざ一つ見つからない。天使に見返されているのに気づくと、少年は笑顔を取り繕った。

「寒くありませんか?」
「だいじょうぶ……です」

 天使は白い翼で、裸身を包み込んだ。

 ――そういえば、冬は便利だったな。あれは。テーブルの上の手燭に火をつけると、少年はぼんやりと天使を眺めた。

 傍から見ている分には、天使は魅力的だ。純白の翼も、透明感のある白い肌も、夜の寒さに震える薔薇色の唇も。どこもかしこも、ふるいつきたくなるほど美しい。
 丸三日も洞窟暮らしを強いられたというのに、そこらの姫君より断然きれいだ。しかも彼の体臭――甘美な薔薇のような芳香――は、そのせいでむしろ強まっていて、手燭の油から漂う獣臭い悪臭をかき消してあまりあるほどだった。

 ――でも、媚び方なんて、全然知らなさそうだ。知ってる奴は、もっと上手に翼を使う。もっと焦らすように、もっと巧みに、計算高く体を隠す。あんな風にしっかりくるまったりしない。あれじゃ、まるで繭だ。
 繭。うん、実際繭だ。
 白い羽毛に包まれたあの体は、まだサナギだ。清らかな美貌は色っぽいというより、あどけない。
 と、そんなことを少年が考えていると、ふと、天使と目が合った。

「あの……」
「はい?」
「あなたは、脱がないのですか?」
「え? あー…………はい。僕はこのままで。それより、天使さま……」

 少年は天使をベッドに押し倒した。

 裸にされ、馬乗りになられても、天使はまだ、きょとんとした顔でいた。どうやら村人は、善人揃いだったらしい。

 ――まあ、当然といえば当然か。こいつの世話をしていたのは、ジェロームなんだから。

 道行く女に点数をつけ、修道女さえ口説いて回った男。ある夜、彼にあてがわれた美少年が自分の点数を尋ねた時、ジェロームがつけたのは零点だった。

「あのな、フォリー。魅力っていうのはな、美人だとかスタイルがいいとか具合がいいとか処女だとか、そういうのじゃねえんだ。――男に服を脱がされたときに、恥じらいがあるかどうかなんだよ」
「ぼくは恥ずかしいなんて思いません。このいやしいからだで、みなさまのお役に立てるのは、しあわせなことです」
「……悪いがオレは、子供を抱く趣味はねーんだ」

 そう言ってその零点を、教会の呪縛と洗脳から解き放った男。
 そして数日前、零点が根城にしている城塞に、荒い筆跡の手紙を送りつけてきた男。洞窟の奥深くに秘めてあった彼の秘蔵っ子は、見るからに男を知らない。あの男の中では、相変わらず、天使は零点らしい。

 目をぱちくりさせる天使に、少年はにっこりと微笑んだ。

「天使さま。百点満点になりたくありませんか?」
「ひゃくてんまんてん……とは?」
「神父さまが、手放したくても手放せないような存在のことですよ。暗い洞窟の中に置き去りにするのではなく、地の果てまでも連れていきたいと思うような、そういう存在。なりたくありませんか?」
「…………なりたい、です」

 天使は目を伏せた。長い睫毛が瞳に影を落とした。

「ずっと……ずっと、考えていました。暗い闇の中に、ひとりぼっちでいる間。神父さまは、どうしてわたしを連れて行ってくださらなかったのだろうと。わたしは……あの人に、ついていきたかった。でも、きっと何か、深いお考えがあるのだろうと思いました。ですから、お言いつけを守るほうが、よいのだろう。あの方が待てとおっしゃるのなら、たとえこの身が朽ちても、いつまででも待とうと。でも……もし…………神父さまに、二度と会えなくなってしまうのならば、お言いつけをやぶっても、あのとき後を追いかけるのだったと、何度、悔やんだことか」

 天使はにじんだ涙をぬぐって、少年を見つめた。

「百点満点になったら、神父さまと会えるでしょうか?」
「さあ? でも、彼があなたを迎えに来た暁には、二度と離れていかなくなることをお約束します」

 少年は微笑んだ。

「ところで天使さま。あなたは今、はだかですが、どう思いますか?」
「どう、とは?」
「恥ずかしいとは思いませんか?」
「生まれたままの姿であることを、どうして恥じる必要があるのですか?」

 天使は首をかしげた。しぐさの愛らしさは申し分ないが返答は零点だ。少年はさらに質問を続けた。

「男と女が、夜に何をするか知っていますか?」
「もちろんです。愛を育むのですよね」
「具体的には、何をどうするんです?」
「手をつないで一緒に眠るのでしょう?」
「じゃあ赤ちゃんはどうやって作るか知ってますか?」
「夫婦で愛を育んだらキャベツから生まれてくるのですよね?」

 見事なまでの純粋培養である。少年は頭を抱えた。

 まずは正しい性教育から始める必要がありそうだ。しかし相手は純粋培養。性知識どころか悪意という概念を持たないモンスターだ。懇切丁寧に説明したところで、わけもわからず鵜呑みにするに違いない。恥ずかしいから恥じらうのではなくて、そう教えられたから、恥じらう。――――これは、ジェロームに言わせると、マイナス二十点だ。

 だが、そもそもアレを良いことと教えたら人間にいいように扱われてしまうし、そうかといって悪いことだと教えたら、愛する人とのソレも拒絶して終生純潔を守り通しそうだ。

 どうしたものかと考えたあげく、少年は一つの結論に至った。
 やはりここは、体に教えるのが一番だ。アレはイケないことだけど、すごく、すごく、すごーく、気持ちいいのだということを。
 そうと決まれば善は急げ。やや肌寒い部屋の中、繭になりかけた天使の肩をつかんで、少年は言った。

「て…………天使さま。我が教団では、毎晩、禊をするのが習わしなんです。これからしばらく天使さまには教団の一員として過ごしていただきますので、ぼくらのやり方に慣れていっていただかなくてはなりません。だから、さっそく今日からぼくが、天使さまの体を清めてさしあげます」
「はあ……そうなんですか。わかりました」

 天使がうなずくと、少年は小瓶を取り出して、中身を手のひらに広げた。その液体は、水にしてはあまりにもぬるぬるしていた。

「それ、何ですか……?」
「聖水です」
「せ、聖水、って、こんなに、ぬるぬるしているものでしたか?」
「最高級の聖水とは、このようなものです」

 しれっと嘘を吐きながら、少年は天使のはだかの胸に、謎の液体を塗り広げた。

 天使は教会で暮らしている間、水浴びをするほかに、時々は聖水を使って身を清めさせられていた。ジェロームが存外に、きれい好きだったので。だが今、天使の肌の上をすべっているその感触は、ジェロームが頭に振りかけてくれた聖水とはかけ離れていた。ジェロームの使っていた聖水はぬるぬるしてはいなかったし、かかったところがじんわり熱くなってくることもなかった。天使は奇妙に思ったが、あくまでもこれは聖水だと言い張るのを律義に信じて、少年の撫でるのに身を任せた。

 上半身を一通り撫でまわしたあと、少年は天使の太ももに触れた。
 きわどいところをくすぐるように撫でられても、天使はおとなしいものだった。だが、指先が秘部に触れると、さすがの天使も驚き慌てた。

「そ、そんなところまで、するのですか?」
「もちろんです。中もしっかり、清めなくてはなりません」
「で、でも……」
「神父さまから、しっかりあなたの面倒を見るよう、お願いされておりますので。……あなたも、神父さまがお迎えにいらした時、百点満点の…………最高の体で、お出迎えしたいでしょう?」

 彼はうろたえる天使をそう言ってなだめると、またベッドに押さえつけた。

「ここ、何か入れられたことはありますか?」

 疑うことを知らない天使は、秘部を蹂躙する指先に戸惑いながらも、律義に答えた。

「ありま、せん……」
「そうですか。じゃあ、念入りにしましょう」
「は、い……」

 丁寧にほぐしているうち、一本でもきつかったのが、どうにか二本収まるようになった。天使の息もずいぶん乱れてきた。

「……天使さま。ちょっと、目を、つむっていてくださいね」
「え? はい……」

 少年はそこに自身をあてがった。半分ほどを収めても、天使はまだ、言われたとおりに、ぎゅっと目をつむっていた。小さい唇で懸命に息をしながら、天使は尋ねた。

「も、目、開けて、い……です、か……」
「まだだめです」
「でも……いたい、です……」
「……そうでしょうね」

 穢れを知らない無垢な体。締め上げ方からしても、閉じた目の縁からにじむ涙からしても、そして接合部からあふれた鮮血からしても、間違いなく初物だ。
 天使は、まだ目を閉じている。きっと今自分が何をされているのかすら、理解していないのだろう。少年は微笑み、けなげな天使の頭をなでた。

「もう、きれいに、なりました、か……?」
「……いいえ。まだ、これからですよ。……楽になってくるまで、目は、つむっていてください。声は出しても、構いませんよ」
「はっ……、い……」

 少年は、丁寧に、丹念に、未開拓のそこを耕した。未熟な肉が次第にほぐれて、だんだんと出入りはスムーズになってくる。
 天使が彼の腕を、手さぐりにつかんだ。

「どうしました?」
「すこし……らくに、……っあ……なって、き、まし……っ、んんっ!」
「そうですか。じゃ、目を開けてもいいですよ」
「ん……」

 天使はまぶたをゆっくりと開いた。目の前には、額に汗した少年。そしてゆっくり視線を下へやると、肉の楔が深々と突き刺さっている。
 熱く硬いそれが引きずりだされるたびに、えもいわれぬ快感が走る。わけもわからず天使は喘いだ。

「なん、です……か? こ、れ……」
「これ? これはねえ、天使がしちゃいけない、悪いコトですよ」

 少年は奥まったところをぐりぐり押した。すると天使が甘い悲鳴を上げたので、彼はしばらくそこをいじめた。

「ど、して……からだ、きよめて、くださるん、じゃ…………」
「この期に及んで、まだそんなこと信じてるんですか。まったくもう……」

 少年はため息をついた。

「これはねえ、セックスっていうんです。人間が、子を成すためにすること…………でもこれは、子どもなんか絶対にできない、快楽のためのセックスです。今、天使さまがぼくを受け入れていらっしゃるところは、ソドミーのための穴ですよ。ソドミー。同性愛。肛門性交。……禁忌ってことは、ご存じですよね? 天使さま」

 天使の表情が悲愴にゆがんだ。じたばたする天使の肩を押さえつけて、彼はささやいた。

「泣かないでください、天使さま。ぼくは、あなたを幸せにしたいだけ……。大体ね、神さまの言うことまじめに聞いたってね、ばかを見るだけです。ずるい人間に騙されて、何もかも奪われて、泣くだけです。ちょっとは疑うことも覚えなきゃ。嘘の一つもつけなくちゃ。人間みたいに。……だいじょうぶ。上手にできますよ。ぼくが、一から、優しく教えてあげますから。だから……ね。神父さまが迎えに来てくれるまで、ぼくと……」
「いや、です。もう、やめて、ください……」

 天使は少年の胸を押した。
 だが、陥落寸前の城を落とさずに引き下がるほど、少年は甘くなかった。彼は、天使の下腹でふくらんでいるものを、指先でなぞり上げた。

「いやなんですか? こんなに硬くしてるのに。それとも天使は、気持ちよくなくても勃起して我慢汁垂らすようにできてるんですか?」

 そんなことを言いながらさんざんいじめると、天使は観念し、蚊の鳴くような声で言った。

「…………ッ、きもち、い、です」
「へえ。天使さま、気持ちいいんですか? ソドミー穴を男に掘られる、こんな背徳的な行為が?」
「ううぅ……」

 天使の目から真珠のような涙がぽろぽろとこぼれた。

「かみさま、ごめんなさい……ごめんなさい……しんぷさま、おゆるしください……」
「いいんですよ。天使さま」

 煤けた金髪の美少年は、うるんだ天使の瞳を覗き込んだ。

「神さまはね、こんなことで怒ったりしませんよ。神父さまだって。……それに、こんな行為が気持ちいいのはね、天使さま。かの神さまが、天使という生き物を淫乱な体におつくりになりやがったせいなんです」
「いん、ら……?」
「そうですよ」

 中をかき回して、淫猥な水音をあえて響かせながら、少年は言った。

「ここに誰を受け入れても、気持ちよくなってしまうようにつくったんです。だから、ね、天使さま。ぼくにいいところを責められて、天使さまが果ててしまわれるのは、仕方のないことなんですよ。……ほら、この辺でしょ?」

 棒の先端が、奥まったところをつついた。天使はたまらず首を振る。

「や……それ、や、です」
「いやって顔してるようには見えませんけどねえ」
「こわい、です……なにか、きそ、で……」
「そうそう。気持ちいいのが、いっぱいくるんですよ。よくわかってますね。……ひょっとして本当は経験あるんですか?」
「ない……ない、で……こんなの、しら、な」
「違う男に毎回そう言ってるんでしょう?」
「いって、ませ……」
「またまた。そんな、かまととぶっちゃって。お上手ですねえ」
「や……もう、や、です……」
「いやじゃなくてね。こういうときは、『いかせて』って言うんですよ。ほら、言ってごらん?」

 言う通りにすればやめてもらえると信じて、天使は艶やかに濡れた唇を震わせた。

「…………せて、くださ……」
「ちゃんと、ぼくの目を見て」
「いか、せ、て……ください」
「……………………おねだりだけは満点ですね」
「……あっ!? あっ、や……だめ、で……」

 少年はしばらく抜き差しを続けた。天使が精を吐いてぐったりしても、しばらくは。

 気を失った天使の頬をつねって起こすと、少年はにっこりと笑った。

「ね。悪いコトするの、気持ちよかったでしょう?」
「……わかりま、せ……」
「そうですか。じゃあ、わかるまでしましょうね」



 首を振り続ける天使をいじめ続けて数時間。少年にも少し疲れがにじんできた。

「そろそろ、わかりましたか?」
「……は、い」

 彼は自身を引きずり出すと、またそれを、天使の華奢な腰の奥に押し込んだ。

「じゃあ、言ってみてください。ぼくとのセックスは、どうですか」

 天使はあえぎながら答えた。

「きらい……です」
「わからない子ですねー。最中にそういうこと言われると男は萎えるから、思ってなくても『だいすき』って言うように、教えたでしょう?」
「うそなんて、つけません……。きらい、です」

 それから何度体を重ねても、天使はずっと、きらいとしか言わなかった。


 天使がそういう態度でいたので、少年も終始不機嫌だった。

「食事を持ってきましたけど」
「いりません」
「天使が食べ物を粗末にしていいんですか?」
「……ほかの方に差し上げてください」
「目下、ほかの方はいません。とっとと食べてください」

 天使は部屋の隅っこで、膝に顔をうずめたまま、顔を上げようとしなかった。翼をひっぱられても、かたくなに顔を伏せ続けた。
 少年はため息をつき、パンと葡萄酒をテーブルに置いた。

「…………もう、天国に帰れません」
「ぼくはとっくの昔に帰れません。おそろいですね」
「え……?」

 少年は明かり取りの小さな窓を覗いた。輝かしい朝日が少年の整った顔を照らし、煤けた金髪が光を受けてきらめいた。天使が顔を上げたのに気づくと、少年は艶やかな赤い唇をゆがめて笑った。

「ご覧の通り、翼がもうないもので」

 天使は絶句した。同時に、ふと思い出した。彼の背中の、古傷のこと。
 あの時手に触れた、あの出っ張り。あれは、わずかに残った、彼のーーーー。
 想像し、天使はぞっとした。自分の翼の付け根のあたりも、なんだか疼くようだった。

「どうして…………何が……あったら、そんな……」
「ああ、気になります? それじゃ、レッスンに合格するたびにぼくの秘密を一つずつお教えしましょうか」
「け……結構です」

 天使は首を振った。

 しかし、やはり気になるので、ちらっと見てしまう。
 翼を失った天使。確かに、よくよく見ると、人間離れして美しい。金髪も、青い目も、吸い込まれそうなほどきれいだし、肌も白くて、きめ細やかだ。

 ちらりちらりと視線を送っていると、少年がにやにやしながら、天使に近づいてきた。

「なんです? ちらちら見て。ぼくのこと好きなんですか?」
「ちがいます。…………さわらないでほしいです」
「そんなこと言わないでくださいよ。こうしてると、なんだか穢れが落ちそうなんです」

 少年は天使に抱きついて、目を閉じた。彼の背中をもう一度さわってみようと、天使はおそるおそる手を伸ばした。だが少年が口を開いたので、慌てて手を引っ込めた。

「人間に捕まった天使が、どうなるか知ってます?」
「い、いいえ」
「セックスさせられるんです。醜く肥え太った連中の、何日も洗ってないような汚いものをねじ込まれて、穴という穴に穢れた液体を注がれるんです。朝も昼も夜も、入れ替わりひっかわり、延々と。……そしてそれは、奴らに言わせると、名誉なこと、なんだそうですよ」

 天使の翼に、少年の指が食い込んだ。痛かったけれど、天使は黙っていた。ーーかぐわしい花の香りに包まれているのが、少しだけ、心地よくもあったので。
 やがて少年は天使を離し、微笑んだ。

「捕まったのがジェロームで、よかったですね」



 それから間もなく、有翼の少年が部屋に入ってきた。彼がうやうやしく差しだした黒いガウンには、翼のための穴がなかった。天使が困っていると、無翼の少年が服にはさみを入れた。――――大胆に、かつ、適当に。

「やっぱり、あなた、きらいです!」
「あ、そういうこと言っていいんですか? これからまた僕と一緒に長距離移動、それも今日は激しく揺れる馬車に乗るというのに」
「きらい、きらい、だいきらいです! うぅ…………なんてことしてくれたんですか!」

 ケープほどの丈になってしまった黒布と自前の翼で、隠すべき場所を懸命に隠しながら、天使は顔を真っ赤にして叫んだ。

「へえ、そうですか。残念ですねえ。気が向いたら、ぼくのガウンを貸してあげようかと思ったのに」

 きゃんきゃんわめいていた天使が、ぴたりと静かになった。と思うと彼は潤んだ瞳でもの言いたげに少年を見つめた。

「なんですか?」
「かし……」
「聞こえません。もっと大きな声で」
「服……かしてください」

 唇をとがらせながら、不服そうに天使は言った。

「えー。でも、ぼくのこときらいなんでしょう?」
「きらいです」
「じゃあ無理ですね。ぼくもきらいな人に大事な服を貸したくありませんので。今日は一日それでがんばってください。少し大きな道に出るかもしれませんが、運が良ければ隊商とは会わないでしょう。運が良ければ」

 部屋を出ようとする少年の服を、天使はつかんで引き止めた。

「く……暗い洞窟からわたしを連れ出して、食事と寝床を恵んでくださったことは、感謝しています!」

 少年が気にせず部屋を出ようとすると、彼のガウンをしっかとつかんだ天使も引きずられるようにしてついてきた。あんまり一生懸命に踏ん張るので、少年はもう少しいじめてやることにした。彼は天使に耳打ちした。

「ひとつ、いいこと教えてあげましょうか」
「……なんですか」
「夜通しぼくとした、あれね。神父さま、大好きですよ」

 ややあって、天使の顔がぽっと赤くなった。手と翼をバタバタさせて慌てふためくさまを眺めながら、少年はにやにや笑った。

「お喜びになるんじゃないですかねー? 淫乱最高って言ってましたし」
「し、し、し、神父さまは、そんな方じゃありません!」
「いえいえ、そんな方です。欲望の塊です。……人間ってのは、えてしてそんなもんです」

 少年はからからと笑いながら、天使に自分のガウンをかぶせた。彼の背中を押して、宿屋の廊下を歩きながら少年は言った。

「あ、そうそう。教団本部まで、おそらくあと三、四日はかかりますが、その間は極力宿をお取りするつもりです。つまりあなたは今夜もぼくと同じ部屋です。……楽しみですね?」

 百点満点の恥じらいを見せ、天使は以降、押し黙った。やけに静かだなと思い、少年が振り返ると、天使は宿の柱にもたれかかってダウンしていた。どうやら許容量を超えたらしい。

「やれやれ」

 少年は天使の肩をかつぎ、手配しておいた馬車に押し込んだ。ーー激しく揺れる馬車に。

 その後のことは、神のみぞ知る。

【END】


 ふまじめ神父×天使を本線にしつつの、腹黒堕天使×純粋培養天使

 悪の狂信者(腹黒)×天使で洗脳快楽堕ちにした方がまとまりよさそうだけど、それってどちらかというと男性向けのエロだよな……とか
 ふまじめ神父×天使のコミカル純愛路線でぶっちぎるのも面白そうだな……とか
 いろいろ考えたのですが、やっぱり堕天使が好きでした。

 でも天使×天使を本線にするには神父のキャラが無視できないレベルで立ち過ぎていたのでこういう感じに。結果カオス。おのれ神父。


*メモ
 天使(清純)
  卵からかえったばかりの雛よろしく神父に懐いている
  蜂蜜色の金髪みつあみ(神父の手による)、スカイブルーの目 150cmくらい
 神父(ジェローム)
  いいとこのボンボン(三男以降) 180cmくらい
  教会で飼われていた天使(フォリー)たちを逃がしたことで地方に飛ばされる
  天使は庇護対象
  敵襲(火災)→天使の保護を依頼→以後消息不明(多分つかまってる)
 神父の悪友たち 
  元泥棒や傭兵などのあらくれもの フォリーの逃亡に関与し、なんだかんだで神父についてきた
・聖サマエル教団 蛇シンボル
  腹黒(フォリー)
   煤けた金髪、青目 両翼は人間に切り落とされた 160cmくらい 剣術
   聖方教会で飼われていたが神父に逃がされ、のちに同胞保護のため教団を設立
   (山賊か何かが占拠していた城塞を攻撃&占領し拠点に)
   伝書鳩の検閲を秘密裏に行っており、神父が飛ばした伝書鳩を空中で回収
   直後に天使(武闘派)を派遣するも連絡が途絶える
   三日後に天使とついでに神父の保護に駆けつけるが、村はすでに滅びていた
   神父を捜索したが骸が見つからないので、生きているだろうとは思っている
   なお道徳観(特に性的な)は崩壊している
  荷物持ち天使
   フォリーに助けられた 140cmくらい かわいい系 弓術
  鳩きてすぐ行った天使
   ジェロームにフォリーと一緒に助けられた 165cmくらい 武闘派(がんばって鍛えた)
・聖方教会 十字架シンボル
 神父の教派 天使を徴発に来たが村人たちの抵抗に遭い、幾らかは屍体に、生き残りは付近の捜索→空飛んできた教団の天使を捕獲して撤収

★そもそもの話、翼があるんだったら飛んで逃げた方がよかったのでは?
 → 天使の方に飛ぶ気がない 神父から離れるつもりがない
 → 飛んで逃げた先にいる人間が善良とは限らない
★聖水の中身
 → マジで謎の液体 そもそも中世にローション的なものがあるのかどうか
★中世では寝るときは裸らしい 庶民も領主も聖職者も 祈りのために起きなきゃいけない修道士修道女は部分的には着てたらしいが(「中世ヨーロッパ生活誌」論創社)
 → へー。
★腹黒の息子がナチュラルにおっきしてるのがなんとなく腑に落ちない
 → 教会で夜の英才教育受けてる間に汁とかを自在にコントロールする技術を身につけた
 → 天使のかほりにあてられた
★冒頭の神父コレ時課やってねえな???
 → やってねえな…… 完全にやってねえな……
  でも逆にこういうのが許されるってことは村に宗教あんま浸透してなくて、ワンチャン異教徒が住んでるかもしれない完全なる僻地に飛ばされたのかもな……
★教会というより修道会の方がなんとなくしっくりくる
 → 神父が若いころいたのって大学か修道院かどっちかだと思うんだけどな 大枠では教会だから教会と書くのも間違いではないのかなということで一応教会と記述したけど、子会社の内部抗争の話してるところに「この国は……」とか言い出すような感じで少し違和感はある

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