「三つ子の恋愛事情」

 詠人は部屋の扉を開けた。  兄は制服のまま、絨毯の上に転がって、すやすやと寝息を立てていた。お気に入りの羊の枕にしがみついて、よく眠っている。 「晩ご飯、そろそろできるってさ」  詠人は兄に声をかけたが、返事はない。頬 […]

「慈愛のスピリット」

◆ハジメマシテ  男には賢者タイムなるものがある。しかし私のうなじに頬をすり寄せて、ねーねーちゅーちゅーと鳴く生き物にとっては、まったく無縁のものであるようだ。  私の背中にくっついて鳴くこの生き物は、桃園詠人と呼ばれて […]

「キャバレーの罠」

◆楽しい夜遊び  大学時代、私はエイト君と同じマンションの一室に暮らしていた。  当時エイト君は、ずいぶん忙しい生活を送っていた。  朝、私と同じくらいの時間にのそのそ起きだして学校へ行き、夜遅く、日付の変わったころにな […]

「台本通り」

◆計画通り  文化祭ではエイト君とひと悶着もふた悶着もあった。  クラスごとに出し物をすることになったんだけどね。なんでもエイト君のクラスでは演劇をやることになり、彼は主役に抜擢されたそうだ。  それで私に、稽古の相手を […]

「心変わり」

◆心変わり  それで、そう。エイト君は、本当にひどい奴なんだ。  あれは確か、マジック同好会を立ち上げて間もない頃のことだった。  今でこそ私は奇術で飯を食っているけれど、奇術に魅了されるきっかけを作ったのは、そもそもエ […]