「限りなくクロに近いブルー(Ⅲ-1)」

◆1 「それにしても接見会へ出るなんて、君も無謀なことをしたものだね」  ルイスの胸ポケットから黒薔薇を抜き取りながら、ヨルシェが言った。 「積極的に接見会へ参加して勤めを果たす模範的なオメガが、齢二十五を超えて生きてい […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅱ-5)」

◆11  翌日ルイスは、電子端末にキーボードをくっつけて、何か書類を作っている様子のミトに尋ねた。 「あの、司令部の人って、ボクらの居住区に来たりすること、ある?」  ミトはキーボードを叩く手を一瞬止めた。 「司令部って […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅱ-4)」

◆8  ミトと別れて以降は、またパートナー探しに奔走するルイスだったが、結果は芳しくなかった。  αを見つけたと思えば、もれなくΩがくっついている。しかも悪いことにそのΩたちは、αの薔薇で髪や衣装を飾っていた。  このま […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅱ-3)」

◆6  ミトと別れたあと、ルイスは出会ったαの数を、何度も何度も指折り数えた。だが、何度数えてもやはり十三人。十一人はなぜかルイスとまともに口をきいてくれない。話の通じるαは二人だけ。その片方は暴君と噂される男で、もう片 […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅱ-2)」

◆3  色とりどりのプリムラやチューリップの咲き乱れる花畑の中を、石畳の道が曲がりくねりながら伸びていた。小高い丘の上には白亜の城館。  住み慣れた機械仕掛けの高楼とは、似ても似つかぬ世界である。歴史書の挿絵の中でしかお […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅱ-1)」

◆1  接見会まで二週間を切った。刻一刻と日が迫ってくるにつれて、Ωの第二居住区にも浮き足だったムードが漂いはじめた。会場へ持ち込む個人褒賞の申請をするために、サロンの電子端末へ並ぶΩは日増しに増えていった。そんな中、ル […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅰ-5)」

◆13  つつがなく時は過ぎた。――――しばらくの間は。  仲良しのギルバートがヴィクターと出かけてしまって、暇をもてあましたルイスが、人でごった返すターミナルを退屈しのぎにぶらぶらしていた時分だった。  威勢のよい掛け […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅰ-4)」

◆10  夜が更けるとルイスは、常夜灯の灯った仄暗い廊下を歩いて、サロンへ向かった。メールのチェックをするためだ。  居住区画に備え付けられた電子端末は、Ωにとってはほとんど唯一といってもいい、外部との連絡手段である。各 […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅰ-3)」

◆7  ルイスが悪名高い男にうなじを奪われた、その翌朝。農地へ向かう一等コンテナの中で、彼は友人に愚痴り続けた。昨日、自分がいかに不幸な目にあったか。ギルバートは深い憐れみをもって、親身にルイスの話を傾聴した。ヨルシェの […]

「限りなくクロに近いブルー(Ⅰ-2)」

◆4 「確かに、青い服を着ていたのですね?」  ルイスは大きくうなずいた。警備センターの応接間にてルイスを丁重に迎え、責任者と名乗った上級職員、アイリーンは、顎をしゃくって部下に何やら合図した。ルイスの目の前に、タブレッ […]